標本から学ぶ自然と命の共生「諏訪クワガタ昆虫館」

公開日 2025年09月19日

市民記者のハルです。
今回は三鷹の森ジブリ美術館そばの「諏訪クワガタ昆虫館」にお邪魔してきました。

汗ばむような陽気の9月中旬。我が家の末娘、2歳児を連れての訪問です。
樹皮を思わせるレンガ調の外壁と、黄色い樹液のようなエンブレムに誘われ、昆虫のごとく中へと吸い込まれていく親子2人。

玄関を入って目の前が受付カウンターです。
館長の清水さんが快く迎えてくださりました。


クワガタの怪獣らしきフィギュアと、どんぐりのぬいぐるみも仲良くお出迎え。



ご覧ください、館内の壁にずらりと並んだ、クワガタ、クワガタ、クワガタの標本!

見たことのない数の昆虫にちょっとたじろぐ2歳児ですが、虫眼鏡と懐中電灯をお借りして観察し始めると、興味深そうに覗き込んでいました。
 


館名になっているクワガタだけでなく、カブト虫やコガネ虫も展示されています。
全部で約250種類、約500匹の昆虫たちの標本をじっくり観察することができます。

生体展示も。こちらは奥の土の中で幼虫が成長中。

クワガタの成虫。木の裏に隠れていて見つけられなかったのを、清水館長がそっとひっくり返してくれました。

それにしても、三鷹にあるのに諏訪とは、こはいかに。
それに、これだけのたくさんの昆虫標本はどのような経緯で集められたのでしょうか?
清水さんにお話を伺ってみることにしました。

こちらの昆虫館はもともと、クワガタが大好きだった初代館長の清水文人(ふみと)さんが、長野県の諏訪郡でオープンした施設だったそうです。

少年時代から八ヶ岳でのクワガタ捕りに熱中していた文人さんは、勤めていた出版社での退職を機に、ご自身で採集したり購入したりして集めていた昆虫の標本を展示する場所をつくろうと決意。
1995年に諏訪郡原村のペンションで営業をスタートしてから、多くの方が鑑賞に訪れました。

文人さんの「子どもたちにも昆虫に興味を持って、身近な命との共生について知ってほしい」という意思を引き継ぎ、ご長男であり現在の館長でもある将文(まさのり)さんが、ご自宅のある三鷹市にて屋号をそのままに移転させたのが、2000年7月のこと。
諏訪郡時代を含めると、ここにいるクワガタたちは30年以上も同じ姿のまま、訪れる人たちに種の存在を伝えていることになるのですね。


今では珍しいブラウン管テレビのビデオコーナーが。
こちらのビデオは先代館長が在籍した出版社による映像作品とのことで、親子でしっかり視聴させていただきました。

清水さんのお話によると、ここ数年、井の頭公園のブナ科の樹木は「ナラ枯れ病」などの影響によって、かなりの本数が伐採されてしまったのだそうです。
クワガタもカブト虫も、生きていく上ではクヌギやコナラといったブナ科の落葉広葉樹が必要不可欠ですが、身近な自然環境のなかで子どもたちがクワガタを見る機会がずいぶん減ってしまったことに、清水さんは心を痛めているそうです。
コナラとクヌギの葉っぱとどんぐり。クワガタやカブト虫にとってなくてはならない樹です。


諏訪郡に昆虫館をオープンした1995年当時の地元の新聞記事も読ませていただきました。

先代館長の言葉の中に「お金を出さなくてはクワガタやカブト虫を見られなくなってしまった時代」とありましたが、それから30年経った現代は、昆虫に触れる機会が更に減ってしまったように思います。

子どもの頃から虫捕り遊びや森林探検など、自分から自然環境に積極的に関わった経験がないことには、昆虫について興味を持つきっかけもなく、何なら触るのもちょっと怖いくらい。今はそんな大人が多いのではないでしょうか。
何を隠そう自分もそうです。なんと風情のなく、勿体ないことか。
クワガタやカブト虫も棲んでいる、こんなに豊かな公園がある街に暮らしているのに!

今日、幼い娘をここに連れてきたことが、彼女の昆虫への親しみに繋がってくれたらいいなあ。


というわけで、近いうちにまた一緒に来ようね、と約束して、昆虫たちと館長にバイバイ。
清水さん、ありがとうございました!

入る前よりもちょこっとだけクワガタに詳しくなり、外の公園の緑が鮮やかに感じられた、初秋の晴天の出来事でした。

お子さまはもちろん、なかなか昆虫に触れる機会のない大人の皆さまも、是非行ってみてくださいね。

諏訪クワガタ昆虫館

所在地 三鷹市下連雀1-14-4
TEL 0422-49-2787
入館料 中学生~大人:300円
小人:200円
開館時間 9:30~13:00
14:00~17:30
休館日 月曜日・木曜日
※都合により臨時休館となる場合があります

 

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